斎藤はどこへ行った

ベリベリエモーショナルOL2年目(元大衆大学へっぽこ心理学部生)

「可」もなく、また、「不可」もない

デスクトップパソコンのモニターに、警告音とともにある一文が表示された。 無機質な男性の声が、不快な警告音に被さるように、表示された一文を読み上げる。 某国を名乗るその一文は、諸般の事情を鑑みた結果、我が国に最新鋭のミサイルを投下することを決…

救われちゃったひと

小中学校の同級生に、斎藤くん(仮名以下略)という男の子がいた。 小学二年生のクラス替えで、私と斎藤くんは同じクラスになり、出席番号が近かった私たちは、なんやかんやで、他愛もない話をしたり、一緒に遊ぶようになった。 斎藤くんは、大家族の長男で、…

2種のチーズ入りパンという私

徒歩20分かけて来たヤオコーのパン売り場、おつとめ品30円引きシールが貼られたパンの中から、彼がおもむろに1つのパンを取った時に私は思わずあっ、と声を漏らした。 フランスパンのような硬めの生地、十文字に切られた中心には角切りのチーズが詰め込まれ…

自由律俳句

地下フロアを抜け出し、トイレの一室に駆け込んで、うずくまって床を見つめていた。明度の低い白熱灯で照らされた床に数本の陰毛と、陰毛のような毛質の長い長い髪の毛が一本、落ちている。指の先から肘までの長さのそれを端から端まで目で追って、また床を…

シロツメクサの墓

JR奈良駅徒歩6分のビジネスホテルで、(おそらく)ローカルの経済番組を見た。市場の縮小から経営不振に苦しむ老舗企業を立て直した若き社長。社長は自社だけではなく市場全体のことを考え、現在自身の持つノウハウを活用した他社へのコンサル事業や、製品の共…

髪をおろした女の子のはなし

金曜日の池袋だった。池袋西武沿いの大通りを、スマホの地図片手にのそのそと歩いているときに、横から、見知った声に囁かれた。「今日上がる前給湯室よったらさ」同じ部署の同期Yちゃんだった。いつのまにか隣に来ていたことに驚きながら、スマホをスーツの…

すみっこにいた女児のはなし

十代の終わり、インターネッツでこんな言葉に出会った。 「学校のクラスは社会の縮図だ。ここで馴染めなかったりパッとしなかったりするやつは、いくつになっても、何をしてもダメだ。」 ガラケーの狭い画面上に浮かび上がるその言葉を見た瞬間、わたしの中…

7/14金曜日に副都心線女性専用車に乗っていたあなたへ

女子高生2人がドアにもたれかかって、おしゃべりをしていた。閑散とした下り方面の通勤電車。けれど席は全部埋まっていて、さっき止まった駅で乗り込んできた2人はいく場がなかったらしい。2人ともおんなじ水色のタータンチェックのスカートを履いていた。き…

気になるMMとわたし

最初に弁明させてもらう。今回出てくるMMは「わたしの周囲にいる誰か特定の一人」を指しているのではなくて、わたしが就活中~就職後に出会った「たくさんのふしぎなおとなたち」を統合して創り上げた架空の存在である。(あと関西弁に関してはおぼろげな記憶…

まさかと人生

2017年3月3日正午前、弊大学の卒業確定者の告示がインターネッツの片隅にて行われた。 告示ページには、8桁の学籍番号だけがつらつらと表示されていた。番号順で。個人情報保護のためである。 先日の入社前研修から帰宅後、サイズオーバーで垢抜けないスーツ…

二子新地駅徒歩13分築19年2K家賃8万2階建てアパートの一室で金曜夜22時に飲みほすちょっとぬるいアサヒスーパードライ500mlの味

いつか訪れてほしい、自分にとっての「幸福」の話をする。 その「幸福」というやつは、おそらく凡庸で垢抜けなくてすり減っていくだけの暮らしの中にある。 私は社会人5年目で、そんなに仕事が「デキる」わけではなくて、得意先への応対はだいぶマシにできる…

心理学部卒の就職最前線②お気持ちよりも金を産め

前回からだいぶ間が空いてしまいました。 ttt414141.hatenablog.com 学部1年生は大学に慣れ 2年生は「え~~~~~成人式の振袖どうしよ~~」と悩み出し そして3年生の一部の人たち(外資系企業やテレビ業界など選考の早い企業志望の人)は就職活動を始めた…

麻婆茄子つくった

実家暮らし21歳、初めて麻婆茄子をつくった。 泊まった友達の家でこれが出てきたら「あっ、こいつのお母さん、料理別にそんなに上手じゃないな」と察しつつも、でも普通にそこまで抵抗もなく食べれてしまうレベルの、可もなく不可もない感じの出来栄えだ。 …

持たざる者へのまなざし

「持つ」というのは非常に便利な日本語だ。 その目的語となれる「モノ」の守備範囲たるや、あっと驚くほど、広い。 「人を魅了する美貌を持っている」 「五体満足で健康な肉体を持っている」 「都内に戸建てを持っている」 「定職を持っている」 「専門資格…

アルピニスト宣言

わたしは、私たちは、日常のあらゆる場面で意思決定を迫られる。 「夕飯に何をたべるのか」、「休日はどこへ遊びにいくのか」といった些細なものから、進学、職業選択、結婚といった、人生の転機となる重大なものまで、意思決定の内容の幅は多岐にわたる。 …

全ての人に「布の母」を

読みました。黒子のバスケ脅迫事件の被告人最終意見陳述書。 「黒子のバスケ」脅迫事件 被告人の最終意見陳述全文公開(篠田博之) - 個人 - Yahoo!ニュース 素晴らしい文章です。本当にすごい。 ある種の人にとって、ずっと心の中に引っかかっていたけど、 言…

生きること、それそのものが「業」(カルマ)なのか 新庄耕『ニューカルマ』感想

以下、読書感想文である。 高校生ぶりだぞ、こういう文章書くの。 新庄耕さんの『ニューカルマ』を読んだ。 ニューカルマ [ 新庄耕 ]ジャンル: 本・雑誌・コミック > 小説・エッセイ > 日本の小説 > 著者名・さ行ショップ: 楽天ブックス価格: 1,620円 新庄さ…

サケ・ノミマクル

ここ半月ほど、14時くらいから1時間ほど一気に酒をあおぎ (ワインボトル半分と自家製梅酒ロック×2がいつものルーティーン) 気を失うように寝て、19時くらいに起き、用意された晩御飯を食べ、小説や散文をひたすら書き、酒を飲み、24時くらいにインスタント…

私の「彼」

私は異性と親密な関係になったことがないのでわかりかねるけれど、でもきっと愛憎いりまじるというのはこういう感情なのだろうなとは思っている。 彼は三人きょうだいの末っ子として生まれた。 上には姉が二人。おしとやかで体が弱いが頭の良い長姉と、活発…

心理学部卒の就職最前線①未来の同胞に告ぐ、我らの前に道はない

4月から大学生になったみなさん、その中でも心理学部という物好きな学問を専攻したみなさん、ご入学おめでとうございます。 さて、突然ですが、皆さんはなぜ文学部でも国際学部でも法学部でも経済学部でも経営学部でも商学部でも哲学部でもなく心理学部を選…

メンヘラコンテンツ地獄の門

溢れ出る自意識をインターネットで公開し、コンテンツ化する人たちがいる。 ブロガーやツイッタラー、ユーチューバー、インスタグラマー。 多様な媒体から常に提供される各コンテンツたち。その持ち味(個性)もやはり多様である。 自意識を披露するだけで注…

ザイル先生と私 エピソード0 〜私のガチャ歯〜

「保険が適用される骨切り手術が必要ですね。そうしないと歯並びを治すのは難しいと思います。」 学生街の片隅にある矯正医院にて、壮年の先生にこう宣告されたのが、今から2年半前のことでした。 えーーーーまじでガチャ歯直すのに手術いるの???私そんな…

私以外も私です

今週のお題「20歳」20歳になったいま、思うことがある。10代の頃、私は父を軽蔑していた。父はアル中で、そんでもって無職だった。自室で、昼夜問わずYAZAWAを爆音で垂れ流し、日中はいつもオンボロの自転車に乗ってブックオフに通いつめる父。読みもしな…

『魔女の宅急便』からみる13歳の就活

魔女の宅急便、今見ると趣きが全く違います。 これは、13歳の女の子が歯を食いしばって就活して、自分で生きていこうとする話です。今の私にはそう見えました。以下、感じたことのメモ。 1.「空を飛ぶしか能がない」 「空を飛ぶしかできない」という言葉、物…

三浦海岸に沈む夕日をみたくて猛ダッシュした話

トピック「年末年始の風景」について 分かる人はあれ?と思うタイトルです。ですが、今しばらくお付き合いください。 先日、大晦日にみさきまぐろきっぷを利用して横浜→三浦海岸→三崎口→三崎港という日帰り小旅行を楽しんできた。 横浜⇆三崎口の京急線代+京…

のぼうの城で上地雄輔という怪物を見た

あえてSMAPではなく、その裏で放送されていた『のぼうの城』について書きます。てか、石田三成を演じていた上地雄輔に戦慄したことについて書きます。 まず簡単なストーリーのあらまし ◉豊臣秀吉が天下統一目前 →最後に関東の北条氏攻め落とすぞ ◉天下の豊臣…

倉橋ヨエコさんって知ってますか?

倉橋ヨエコさんが大好きだ。 ヨエコさんの作品はとても独特である。 第一に、メロディラインがなんか変だ。 変なところで盛り上がり、盛り上がりに従って音程は中途半端に高くなって(あるいは極端に高くなって)、フレーズがおさまるところでは音程が下がりき…

そして、父を語る1

私の父は、一昨年の11月にホスピスで死んだ。 職が続かない人だった。建築会社、証券会社、中規模商社と将来設計が感じられない転職を繰り返したのち、40半ばで拾ってくれたシロアリ駆除会社で左遷に合い自主退職。その後は郵便局や冷凍センターのアルバイト…

目黒線でナンパしてきた男の人の心を解体新書しようとした話

祝日の早朝の車内、人はまばら。 最寄り駅から車両に乗り込んでいた私は、端っこの席で来月末のtoeicのためにダラダラと単語帳を見ていた。 私の座席の列には誰も座ってなくて、しばらく気楽にガタンガタン。こりゃー寝るぞと思った矢先、どっかの駅で「寒み…

自称メンヘラが心理学部に行ってよかったなあと思ってる理由2つ

タイトル通りです。私は中高をメンヘラとして過ごしてきました。そんな私が大学では心理学を専攻し、よかったなと思っている理由を述べていきます。 1.「誰かに自分のことをわかってほしい」なんて思わなくなる Twitterやリアルでエンカウントしたメンヘラな…